諸経費とは?

諸経費とは、会社を運営するにあたって必要な経費を指します。

ただ、全ての必要な経費を指すのではなく、利益に直結しないような支出のみを指し、原材料や労働力など運用に必要な支出を差し引いたものが諸経費になるのです。

たとえば、製造業であれば人件費や材料費以外の通常の経営に必要な経費が諸経費になるのです。

直接生産や作業に必要なければ不要な支出ではと思われるかもしれませんが、この支出がないと本来の生産や経営が立ち行かない費用でもあります。

そういった意味で、直接業務に関係ないような費用であっても会社運営のために必要な費用といえるのが諸経費なのです。

次の項目では、諸経費の目安について解説していきましょう。

諸経費の目安

諸経費は、直接業務に関係ないもののなくてはならない支出を指します。

この諸経費は企業の規模が大きくなればなるほど、諸経費の割合も増えていくとされています。

つまり、諸経費の割合を見れば会社の規模がある程度見えてくるといえるでしょう。

具体例として、一般的な企業の諸経費目安は5~10%が目安とされていますが、大企業では30%に達するケースもあります。

ただ、これはあくまで目安であり、小さな企業であっても20%のところもあれば、大企業であっても15%程度に抑えているといったケースも見られます。

それでも全体的にみれば、企業の規模に応じて諸経費の比率が高くなる傾向は強いのです。

では、諸経費の目安が分かると、何が分かるかといえば、ある仕事をしてもらう際に、その企業が占める諸経費はどの程度か分かるということです。

100万円の修繕工事をしてもらう場合、同じ工事であっても小さな企業では諸経費が10%の10万円程度、一方大きな企業では諸経費が20%の20万円程度かかっていることを意味します。

会社の規模によって諸経費が異なるということは、こういった点に現れてくるのです。

ただ、この諸経費が安いところが良いということは言い切れません。

その点については、最後の項目で解説します。

諸経費に含まれる費用とは?

諸経費について解説してきましたが、どのようなものがあるのでしょうか。

先ほどの工事をする場合を例に挙げると、主なものとして次の項目があります。

・車両関係費
・事務関連費
・保険関係費
・広告宣伝費
・交際費

車両関係費は、燃料代、メンテナンス費用、車両自体の減価償却費が挙げられます。

燃料代は、直接工事などに携わる重機ではなく、現場監督や視察に使うための普通自動車の燃料費などが挙げられます。

これらは直接工事に使用するわけではないので、支出として間接的なものになる費用です。

しかし、この費用が使えないとなると、現場監督などのスタッフが現地に行くことができなかったり、作業を進める際の確認や工事内容の変更といったことができなくなります。
同様にメンテナンスの費用も諸経費になります。

この費用がないと、車が円滑に運用できなくなるので必要ですが、直論を言えばメンテナンスをしなくとも工事はできるのです。

しかし、万が一車両にトラブルが発生した場合工事ができなくなる恐れがあります。

車両自体の減価償却費も諸経費に含まれているケースもみられます。

車両を取得した場合、その工事にだけ使って廃棄というわけではありません。

各工事の諸経費に加える形で車両を取得した費用を分割しています。

特定の工事だけ計上しないという考えもありますが、何を基準に計上しないのかといった解釈が求められます。

ある意味事務関係費が諸経費の代表的なものといえるでしょう。

主なものでも次のようなものが挙げられます。

1・写真代
2・帳票代
3・労務管理費
4・福利厚生費
5・事務用品費
6・近隣対策費
7・事務所の賃料

写真代は、工事現場の撮影をするものです。
これは管理に必要なだけでなく、何か問題があった場合の検証のために必要です。
工事には直接関係ありませんが、ないと問題が発生する可能性があり、重要な支出です。
帳票代とは、経営活動に関わる書類で、「帳簿」と「伝票」のことを言います。
これらは、工事で直接使用しませんが、お金の管理をするためになくてはならないものです。
一見紙とインクだけのようなイメージもありますが、その背景にある事務管理ソフトやハンコ、印紙なども含まれます。
こちらも用意しないと、違法な工事の取引になる可能性が高いことから必須の出費です。
労務管理費も発生します。
これは下請け企業との契約を結ぶ手数料や下請け企業から派遣されている現場労働者、臨時で直接雇用する現場雇用労働者の労務を管理するためにかかる費用で、書類の事務にかかるものや作業員の名札のような小物なども費用として発生されます。
作業員の報酬ではないので直接関係ない費用ですが、ないと円滑な連携ができません。
福利厚生費といえば、従業員の慰安のようなイメージがあります。
しかし、工事における福利厚生費は、作業員の休憩室などの用意です。
過酷な場所であれば避難場所になることもあるでしょう。
そういった意味で重要な経費です。
事務用品費も重要で、紙やペン、コピー機などのOA機器の費用も含まれます。
近隣対策費は、工事の告知や説明会に使う会場の費用などが挙げられます。
事務所の賃料も諸経費に含まれます。
実際に工事とは関係なくとも、上記のようなお金の管理などは事務所がないとできません。

他の諸経費もみていきましょう。
保険関係費は、労働災害保険などです。
また、広告宣伝費は工事現場の防音パネルに書かれた企業名や新しい仕事を取得するための広告も含まれます。
交際費は、工事現場であっても近隣住民に配布する挨拶のタオル等があります。

このようなものが諸経費に含まれているのです。

ただ、注意点として、企業のよって解釈が異なります。
工事の例では事務関係の費用が諸経費で処理されていますが、会計事務所などはこの事務関係の費用が必須の経費になります。
そういった意味で、業界関係なく諸経費と定められた項目がないということを頭に入れておきましょう。

諸経費が会社によって異なる理由
先ほど触れたように企業によって諸経費の解釈が異なります。
その理由として、諸経費の支払方法が異なったり、故意に無くしたりといったことが挙げられます。
諸経費として、保険関係費がありますが、これを現場単位で契約するのか、あるいは年間契約にするのかによって大きく異なり、費用も違うのです。
また、見積もりの費用を持ち出しにして諸経費として計上しないことで他の業者と差をつけるといったことをしているケースも少なくありません。
また、担当する税務関係部門の解釈によって諸経費に入れるか、入れないかといったことすら見られます。

諸経費の安い業者を選ぶべき?

冒頭の意味から、100万円の工事でも諸経費が安い企業に依頼したほうが諸経費を差し引いて残ったお金が多い分、良い工事をしてくれそうなイメージもあります。
しかし、諸経費が安い方が必ずしも良いというわけではありません。

たしかに確率とすれば諸経費が安い方がお得に工事をしてくれる傾向にあります。
ただ、諸経費が安いということは他で無理をしている可能性も考えられるのです。

先ほど触れた諸経費の内容を見るとわかるように、車両や事務手数料、さらに保険料といったものがあります。
これを削減してしまうと、車両は効率の悪い古いものを使用し、事務も遅々と進まないことから工事着手の遅れが出るといったこともあります。
また、保険料をなくしていたら、違法な工事とみなされてしまうケースすらあるのです。
こちらが企業として工事を依頼した場合、労災保険にも入っていない業者に依頼したとしたら、こちらの企業イメージも大きく損なわれるでしょう。
実際、各種保険に入っている旨は工事の目立つ場所に明記されているので、労災保険に入っていないことが一目でわかるのです。

基本的に安い方が良い諸経費ですが、あまりに安い場合、あるいは何となく高い印象を受けた場合は、どんどん担当者に聞くことをおすすめします。