税理士への相談を検討している時、ダブルマスターという制度がどのようなものか、ダブルマスターの税理士を選ぶ時はどのようなメリットとデメリットがあるのかについて知りたい人も多いでしょう。この記事ではダブルマスターについての詳しい説明や、ダブルマスターの税理士を選ぶメリット・デメリットについてそれぞれまとめました。税理士を選択する際にぜひ参考にして下さい。
ダブルマスターとは?
税理士のダブルマスターとは、条件に見合う科目の修士号を取得して一部税理士試験が免除された状態のこと。税理士になるためには基本的に国家試験である税理士試験を受けて合格しなければいけませんが、税理士試験の全科目を受験しなくても税理士の資格を取得する方法もいくつかあります。そのひとつがダブルマスターですが、弁護士の資格を持っている場合、税理士試験は不要となります。また公認会計士の資格を持っている人や、国税局や税務署などの行政機関で実務経験を積んだ人は、所定の研修を受けることで税理士の資格を取得可能です。詳細は後述しますが、ダブルマスターはかつて税理士試験免除の対象になっていました。平成14年度(2002年度)に税理士試験の制度が改正され、それに伴ってダブルマスターについても免除制度が変更されています。
2002年4月1日以降から大学院に進学した人で税理士を目指す場合は、平成13年以前のように両科目の修士号を取得しても全科目免除にはならず、指定された科目を受験して合格することが免許取得のための条件となっています。改正に至った大きな理由は、試験に合格して税理士資格を取得した人たちとの整合性を図るためですが、もうひとつの理由は、大学院で学んだ法律学・商学が知識としてカバーできる範囲と、実際に税理士として働いた場合の仕事内容にギャップが生じないようにするためです。大学院で修士を取得し、税理士試験を受験せずに税理士になってもすぐに実践につなげられるとは限りません。一方税理士試験は税理士になるための基礎的な知識を身につけないと合格が難しいため、実用性のある業務を行うために受験が必須となったのです。
ダブルマスターの税理士を選ぶメリット
ダブルマスターの税理士を選ぶメリットは、学生時代に培った勉強方法を有効活用し、税法の改正についてもしっかりとした対応が期待できること。先にも説明したとおり、ダブルマスターは大学院で該当する修士号を取得することで一部試験が免除することができる制度です。修士課程は専門的な知識を深めることが要求されますので、それを身につけるためには高いレベルの学習経験が必要となります。もちろん修士課程で学んだ内容がすべて税理士の仕事に活かせるわけではありませんが、修士過程の中で身につけた学習習慣を実務に活かすことは可能だと言えるでしょう。
税理士は常に情報のアップデートが求められる職業です。税法は常に改正が行われますので勉強を欠かすことができないのはもちろん、社会の動きについても敏感である必要があります。税理士免許取得した時の知識のままでは現場で役に立たないだけでなく、正確性にも欠けるためクライアントの信頼が得られない可能性もあります。しかし、ダブルマスターの税理士は知識を深める学習方法を身につけているので、それを応用して法の改正にもすぐに対応できる勤勉さが期待できます。専門性的知識と税理士としての基本的な知識をしっかり押さえているダブルマスターの税理士であれば、非常に信頼できる相談相手になるでしょう。
ダブルマスターの税理士を選ぶデメリット
ダブルマスターの税理士を選ぶ時は、メリットだけでなくデメリットが発生することあります。例えばダブルマスターの制度を試験免除のみに利用しただけの場合は要注意。その税理士は仕事に対する意識が非常に低く、税理士として身につけている知識が少ない、または偏っているために雑な仕事をする可能性があります。税理士試験は税法に対して広範囲の知識が求められますが、修士課程は試験と違い偏った内容で勉強していることもあります。試験が免除され偏った知識のまま税理士になると、税法の基本的な知識をなかなか身につけることができません。そうなるとクライアントとも信頼関係を築くことが困難になる危険性があります。
一部のダブルマスターの税理士は、業務としての実践的な税法の知識より、修士課程で学んだ学問的知見を重視する考えを持つ人もいます。このような税理士が学問的知見のみの知識でアドバイスを行っても、クライアントは説得力を感じられず、むしろ税理士という仕事の重要性を理解していないと判断するかもしれません。このような知識の偏りはダブルマスターの税理士にとって致命的です。もちろん、ダブルマスターの税理士すべての考えが偏っているということはありません。しかし、中にはこのような税理士に当たる可能性があることも想定した方がいいでしょう。
税理士の試験免除者は増加傾向にある
実は税理士を目指す人で試験免除の対象になっている人は増加傾向にあります。先述した通り平成13年以前はダブルマスターになると税理士試験はすべて免除になっていましたが、ダブルマスターの税理士は知識の偏りがあり実践に乏しい、といった考えで税理士業界では敬遠する人もいました。もちろんダブルマスターを取得した人がすべて当てはまるわけではありませんが、修士課程と税理士の実際の業務にギャップがあったため、ダブルマスターに対して厳しい考えを持つ税理士もいたようです。
そのような考えも年月とともに変化し、税理士試験改正前の平成7年(1995年)の試験免除者が9462名だったのに対し、その20年後の平成27年(2015年)は26010名と実に2倍以上も増加しています。税理士試験は必須科目・選択必須科目・選択科目に分かれ、5科目に合格することで税理士免許を取得できます。一方ダブルマスターを取得すると最大3科目免除となり2科目の合格で免許取得につながります。最短期間で税理士免許を取得し、早めに実務経験を積みたいと考えている学生にとってダブルマスターは有効活用できる免除制度と捉えられ、これが試験免除者増加の理由になっているようです。また、試験問題が以前より難しくなったことや、税理士専門コースを設立して学問的な視点と実践的な内容の擦り合わせを図る大学院も出てきたことも増加の後押しをしています。このような背景から、ダブルマスターの試験免除制度を利用して税理士を目指す人は今後も増加の可能性があると言えるでしょう。
現在の税理士試験の免除制度
税理士試験は昭和26年(1951年)に第1回試験が開催され、それから毎年行われている国家試験です。免除がない場合は2種類ずつの必須科目と選択必須科目、さらに7種類の選択科目の中からそれぞれ選び、合計5科目を受験する必要があります。ダブルマスターを取得した人は試験免除の対象になりますが、その場合免除申請の手続きは必須。申請をしないと試験免除者にはなりませんので注意しましょう。申請は大学院で修士号を取るために必要な研究指導のもとで執筆した修士論文が必要になります。この論文を国税審議会に提出し、試験の科目免除を申請します。
平成13年(2001年度)までは論文を提出することで5科目の試験がすべて免除になっていましたが、平成14年(2002年)に試験制度の改正が行われ、この年の4月1日以降に大学院へ進学した学生からは全科目免除はなくなりました。平成14年以降は修士論文提出で免除されるのは論文の内容によっても異なります。例えば税法に関する論文は税法系の科目3科目、会計学に関する論文の場合は会計系の科目2科目が免除対象となるのです。かつてのように全科目免除ではなくなりましたが、税理士試験が非常に難しい内容であることから、少しでも科目を減らして負担を軽くしたいと考えダブルマスターの免除制度を活用している人もいます。
ダブルマスターの税理士はメリットとデメリットを考慮して選ぶようにしよう
ダブルマスターの税理士を選ぶ時はメリットとデメリットがそれぞれ存在します。専門性のある学術を行ってきた経験を活かし、クライアントの立場に沿った対応をする人もいますし、偏った視点で客観性に欠けるアドバイスしかできない人もいます。しかし、試験制度の変化によりダブルマスターの税理士の意識も変化しています。ぜひこの記事を参考にして信頼できる税理士を見つけてください。