領収書が宛名なしだったら?

領収書には、宛名や金額・但し書き(取引内容)・発行日・発行者を記載することが消費税法第30条9項1号によって定められています。

一方、小売業や旅客運送業(鉄道会社やバス会社等)・旅行業・飲食業・駐車場業の場合には、領収書への宛名記載が不要とされています。そのため、品物を購入したりサービスを利用したりした際に、「領収書」と印字された宛名なしのレシートが発行される場合があります。

領収書に宛名が記載されていない場合、領収書の記載内容だけで会社経費か個人経費かを判別できないケースが想定されます。また、税務調査時に経費の内容を明確に説明できなければ経費として認められず(否認)、消費税や法人税等の追加納付を求められることも想定されます。場合によっては領収書の発行元に対し、本当に会社宛に領収書を発行したのかを調査(反面調査)することもあります。

そのため、可能な限り会社経費であることを明らかにしておく必要があります。

領収書の宛名なし以外に気を付けることは?

会社経費であることを明らかにするためには、社員から領収書を受け取る度に支出の状況を記録しておくことが大切です。領収書表面は、お金を受け取った側(商品購入先やサービス提供先)が記載する欄なので、領収書の裏側又は領収書を貼り付けた台紙に記録することになりますが、次に示す内容が主なポイントとなります。

事務用品などの物品を購入した際は、購入物品の明細を記録します。「品代」だけだと、会社経費の中に個人経費が紛れ込んでいるかを判別することが困難だからです。複数の物品を購入する際は、領収書ではなくレシートの提出を求めることも一考です。

交通機関を利用した場合は、乗車区間や用務先を記録します。交通系ICカードの場合は、券売機やパソコン画面で乗車履歴が表示されるので、その履歴を印字して帳簿に添付すると記録の客観性が高まります。領収書の発行を受けられる場合は、領収書に乗車区間を記載するよう駅係員に依頼することも可能です。

飲食店の領収書の場合は、相手方の氏名や関係性・飲食の目的・合計人数を記録します。飲食代が1人あたり5,000円以内であれば、この記録を行うことで交際費以外の科目で経費計上、すなわち全額を損金算入することが可能となります。また、相手方の関係性を記録することで、私的な飲食の経費化を防止することも可能です。

なお、宛名なしの領収書に経理担当者が社名を書き加えるケースがみられますが、税務調査時の筆跡鑑定をきっかけに経理処理全体の信憑性を疑われることも考えられるので要注意です。