資本家が、赤字会社の経営権を得た上で、節税対策の目的で、過去の繰り越し欠損金を収支に計上して、見かけの収益を少なくする、あるいは、赤字の決算として、法人税の軽減ないし免除による、収益改善を目論む場合、原則、平成18年に改正された税法上、過去の欠損金の計上は認められません。

従って、赤字会社を購入しても、新しい株主による経営関与により、収益が上がれば、全て課税対象になります。

逆に、旧会社の帳簿に無い債務、例えば、保証債務や滞納税金など負債に相当するものは、引き継ぐことになり、以後の経営の負担になります。また、社名や代表者名、本社の所在場所の変更のための登記費用も意外にかかるため、新規に会社設立を行って登記した場合と余りかわりないくらいの負担が必要です。

新規の会社を設立するのに、資本金が1円でできる様な法律改正が行われた後の時代ですから、赤字の会社を購入するよりも、新規の会社を設立する方が、制度融資が受けられるメリットもあり、より、経営のリスクは少なくて済むといえます。

元来、赤字を計上していた会社には、赤字経営になる経営幹部の資質や労使関係、企業イメージの他、部門長の職務レベルや社員の順法意識など、多様な構造上の問題を持っている場合が多く、それらを改善して黒字経営に転換するのには、非常な労力と困難が付きまとうのです。

従って、その様な経営リスクは、会社の株式を購入して経営権を得る検討をする段階で、できるだけ少なくする必要があり、その面から、赤字会社の経営権を得るのには、殆ど、メリットが無いといえます。

過去の欠損金を計上できる特例処置

赤字会社の株式の50%以上を購入して、会社の経営者になった場合、原則的には、過去の繰り越し債務を、収支に計上することは税法上できないことは、前節で述べました。

但し、特例処置として、会社の経営者が変わった後、休眠会社として新規の事業活動を停止していれば、5年の期間の経過の後、繰り越し債務を計上することが可能です。

なお、この際、会社購入の直前年度の売上の5倍以上の借入、出資等を行った場合も、新規事業開始と同じ扱いを受け、繰り越し債務は抹消され、以後計上できなくなります。しかし、休眠会社にしている状態では、利益が得られない期間を5年間も要することになるのです。

加えて、毎年の税務申告や役員変更の登記手続きが必要な上、「法人地方税の均等割り」が課される場合があり、もろもろの負担が生じてしまいます。