税務調査と聞くと何を連想するでしょうか?

税務調査とは、納税者の申告が適切であるかどうかを調査するものなので、正しく記帳し、申告していれば何ら困ることはないはずです。

しかし、そうではあっても、実地調査が入るとなると誰しも不安になるものです。これから5回にわたって税務調査について見ていくなかで、いざ調査となっても適切な対応がとれるよう、税務調査についての理解を深めていきましょう。

税務調査に入る確率

実際に税務調査に入る確率がダイレクトに公表されているわけではありませんが、ここでは実際どれくらいの税務調査が実施されているか、「実調率」とはなにかについてみていきましょう。

国税庁が発表している平成29事務年度における税務調査の概要を見てみましょう。

この概況書は「所得税及び消費税」「法人税及び法人消費税等」「相続税」の3つに分かれ、それぞれ発表されています。早速、内容を紹介しましょう。

1)所得税及び消費税
税務調査の件数は62万3千件で、前年度より若干件数は減っています。
このうち申告漏れ等があったものは38万4千件あり、約62%が指摘を受けていることになります。
また、個人の消費税における税務調査の件数は8万8千件で、前年度とほぼ同じであり、申告漏
れ等は6万2千件となっています。

2)法人税等(法人の消費税含む)
法人税における税務調査の件数は9万8千件で、前年度とほぼ同じです。
このうち申告漏れ等があったものは7万3千件あり、約74%が指摘を受けていることになります。
また、法人の消費税における税務調査の件数は9万4千件で、前年度とほぼ同じであり、申告漏
れ等は5万5千件となっています。

3)相続税
この報告では、平成27年に発生した相続が中心となっています。税務調査の件数は1万3千件で、前年度より増えています。
このうち申告漏れ等があったものは、1万1千件あり、約84%が指摘を受けていることになります。

これだけを見ると、非常に高い割合で申告漏れ等の件数が挙げられており、税務調査イコール追徴税という図式が成り立つように思われます。

では、これらの税務調査が確率とはどのくらいでしょうか?

「実調率」という用語があります。これは全体に対する税務調査件数の割合のことで、法人につき約 3%、個人につき約1%という水準と言われています。年数でいえば、法人は30年に1回、個人は10年に1回ということになります。これだけを見たら税務調査を受ける確率は非常に低いように思われます。

平成元年の法人の実調率が8.5%、個人の実調率が2.3%であったことから見ても、税務調査が入る確率は低くなっていると言えそうです。

しかし、国際化による複雑化、脱税手口の悪質巧妙化だけでなく、目まぐるしい勢いで新しい会社や事業主が増えていることに鑑みれば、継続して事業をしている法人や個人は決してあなどれない数字と言わざるを得ません。

どのような場合に税務調査が入るのか

税務調査が入るのはどのような場合なのか?

これは非常に気になるポイントですが、残念ながら一般には公開されていません。しかしながら、法人税については先に挙げた平成29事務年度調査の概要から、国税庁の取組内容が明らかになっています。

この内容から、どのようなケースが狙われるかはある程度うかがい知ることはできます。

<税務調査の主要な取組>
1)消費税還付法人
虚偽の申告により不正に消費税の還付金を受けるケースがないか
2)無申告法人
事業を行っているにもかかわらず申告をしていない法人はないか
3)海外取引法人
海外取引先への手数料を水増しするような不正会計はないか
非居住者や外国法人に対する支払について、源泉税を正しく徴収しているか

税務調査の選定ではこのような取り組み方針に従って、申告等の内容を基にして、過去の調査実績や収集された各種資料(取引先での資料等含む)を参考に、調査対象を抜き出します。

不正が行われる可能性の高い法人に対しては、重点的に調査を行うという方式が採用されていることは明らかでしょう。

税務調査の頻度が高い業種

先に挙げた平成29事務年度調査の概要によりますと、不正発見割合の高い10業種というのが示されています。上位5位をあげますと、次のとおりです。

1位 バー・クラブ
2位 外国料理
3位 大衆酒場、小料理
4位 その他の飲食
5位 土木工事

このうち、1位のバー・クラブでは不正発見割合が66.4%、5位の土木工事でも不正発見割合は30%となっています。「不正」となっていますので、会計の認識の違い等ではなく、不正な取引や不正な会計があったことを示しています。

また、税務署側は法人の管理を3つのグループに分けておこなっています。

1)第1グループ
申告内容、納税実績が良好と判断された法人で、主として指導による接触
2)第2グループ
第1、第3グループ以外の法人で、主として簡易な調査による接触
3)第3グループ
過去に不正があり、調査必要度が高い法人で、実地調査による接触

税務署から連絡が入ったときは、先方の名刺などでどのグループの調査かはすぐわかるので、どのような接触をしようとしているのかはわかります。第3グループに入った場合には、3~5年に一度の調査が行われることになります。過去に不正があり、3年以上未接触の法人は選定対象に入ると考えて間違いないでしょう。

税務調査の多い時期

税務調査に時期はあるのでしょうか?

税務署では、7月1日から翌年の6月末までを「事務年度」と呼びます。そして、税務署の人事異動は毎年7月10日にあり(定期異動日)、ここから12月までが「上半期」、そして翌年1月から6月末が「下半期」となります。

そしてこの上半期においては、調査実績が調査官の評価に大きく影響すると言われており、不正発見を重視し、調査期間も長期化の傾向にあります。他方、下半期は確定申告もあるため、それほど調査は実施されません。

法人の決算期が2月から5月であれば上半期に、6月から翌年1月にあれば下半期に税務調査が行われますが、事前に入手した資料等によって、問題法人となった場合は時期に関係なく調査されます。

税務調査が入る確率を減らすには?

それでは税務調査を受ける確率を減らすにはどのようにすればよいでしょうか?

まず、主要な取組の3要素に当てはまっていれば、再度過年度の会計から見直し、修正申告により正しい納税をすることに尽きます。例えば、調査着手前に自主的に修正申告する場合には、重加算税はかからないなど特典さえあります。

そしてたとえ第3グループの調査対象となる法人であっても、次の調査時には適正な会計・申告であることを証明できるように必要十分な証憑を取っておくことです。

次回の調査が第2グループ、さらに第1グループとなれば税務調査が入る確率が減ることと同じとなるわけです。

まとめ

いかがでしたか?

今回は、税務調査の確率や方針、頻度、時期といった角度から見てきました。

まとめますと、
 税務調査の割合(実調率)は減少してきている。しかし、母数が増えているためで調査件数は増えている税目もある。
 特に法人税では、消費税の還付申告、無申告、海外取引等について重点的に税務調査が実施される。
 調査頻度の高い業種第1位は、バーやクラブである。
 税務調査官がどこのグループに所属する人かで調査レベルがわかる。
 税務調査の多い時期は、7月後半から12月といえる。
となります。

税務調査が入る確率を減らすために適正な会計や申告をするというのは、本末転倒です。

本来は、適切な会計により正しい納税をすることが法人だけでなく、納税者すべてに求められているのであり、今は不十分であっても少しずつ税金に対するリテラシーを高めていくのが結局は早道なのでしょう。