税務署から届く「お尋ね」は、税務調査の前に届くことが多いです。文書で通知されることが多いですが、税務署から直接電話で問い合わせがくることもあります。

主に、大きな金額の財産が動いたと税務署が判断したときに届きます。株の売却益や相続の発生、住宅購入時など、様々なケースで税務署から「お尋ね」が届きますが、定められた期日に従って回答しておくことが無難です。

「お尋ね」を無視したままでいると、次のステップとして「相談のご案内」が届きます。税務署に出向けば相談に乗ります、という趣旨の内容ですが、遠回しに呼び出しを受けていると捉え、期限までに何らかのアクションを起こしておくことが大切です。

いずれの書類も無視したままにしておくと、「税務調査」の案内が届き、呼び出しを受けることになるため注意が必要です。

税務署からのお尋ねとは?

税務署からの「お尋ね」とは、確定申告の内容の確認のための問い合わせのことです。ほとんどの場合、税務署から電話または「申告内容のお尋ね」という件名の文書が郵送されてきます。この点、納税者の申告内容を帳簿などで確認し、誤りあれば是正を求める「税務調査」に似ていますが、「税務調査」が国税犯則取締法や国税通則法に則って行われるのに対し、「お尋ね」は、行政手続法に則って行政機関が一定の行政目的を実現するために指導や勧告、助言を行う「行政指導」にあたります。「税務調査」では納税者の同意の下で行われる任意調査であっても、税務職員の質問に対し正当な理由なく虚偽の陳述や不答弁を行った場合には罰則規定が設けられていますが、「お尋ね」の場合はあくまでも「自主的な協力」という前提があるので、行政指導に従わなくても特に罰則はありません。

また、税務調査の結果を受け修正申告した場合には過少申告加算税などの加算税が課されますが、お尋ねによって修正申告した場合は、加算税が課されないことがほとんどです。過少申告加算税とは申告期限内に提出された申告書に記載された納税額が過少であった場合に賦課される税金のことですが、税務署などによる税務調査の通知が来る前に自主的に修正申告した場合には課されないことになっています。したがって行政指導による「お尋ね」により修正申告した場合には、この過少申告加算税は原則として課されることはありません。ただし「お尋ね」であっても郵送されてきた文書の回答期限を超えて放置していた場合には、税務調査に切り替わり加算税や延滞税などが賦課される可能性もありうるので注意が必要です。

税務署からお尋ねはどんなときに届く?

税務署からの「お尋ね」は税務署側が申告や届出の必要があるのではないかと判断した場合に届きます。例えば、税務署が申告内容に疑問を持った場合はもちろん、不動産の購入および売却、相続などで財産が大きく動いた場合、売上高が1,000万円を超えて消費税の課税事業者届出書を提出しなければならない場合など、内容は多岐に渡ります。前述した税務署から郵送される「お尋ね」についての文書には、不動産を購入した場合には仲介手数料などの関連費用や資金の調達方法、相続の場合には被相続人(亡くなられた方)の不動産屋や株式などの財産状況などの項目に対する回答が求められています。

不動産の購入や売却では、贈与税や所得税が発生していないか確認する際によくお尋ねが送られてきます。また、不動産の購入や売却以外でも、不動産投資により家賃収入などがある場合はこういった「お尋ね」が頻繁に行われます。不動産所得額は、総収入額(不動産からの家賃収入、保証金、礼金)から必要経費(減価償却費や修繕費、建物への固定資産税など)を差し引いて求められますが、保証金や礼金を総収入額に含めていなかったり、修繕費のなかでも「資本的支出」(資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価額を増価させたりする部分の支出。資産として計上しなければならない)を必要経費として計上していたりなど、申告時の誤りが多発しているからです。相続では、税務署が金融機関から伝えられた金融資産の保有状況や登記情報に照らして相続税が発生していないかどうか確認する際によくお尋ねが送られてきます。

税務署からお尋ね届いたらどうすればいい?

「お尋ね」は自主的な協力を要請する行政指導なので、期限内に回答しなくても罰則は生じません。しかし税務署としては、金融資産や不動産についてある程度情報を握った上で「お尋ね」をしているので、素直に回答した方が得策でしょう。その結果、申告内容に誤りが見つかって修正申告しなければならなくなっても、基本的に加算税は課されることはないので、かえってお得といえます。「お尋ね」の文書の内容が理解できなかったり、書類をどう記載すればいいのかわからなかったりする場合には、通帳や借用書などの関連書類を持参して税務署に聞きに行くことをおすすめします。前もって電話で予約しておけば、税務署員が資料の見方や書類の書き方について丁寧に教えてくれる上、相談料は無料です。

その他、書類の作成を税理士に依頼するという方法もあります。特に相続について被相続人の遺産の内容が把握できていない場合や不動産や有価証券、骨董などの価値がわからないといった場合、個人での調査は限界があるので、相続専門の税理士に助言を受けることをおすすめします。税理士に相談というとお金がかかりそうなイメージがありますが、各都道府県の税理士会では「税の無料相談所」(予約制、相談時間は1人当たり30分以内)を行っているので、まずはこちらに相談に行き書類の書き方などを教えてもらいましょう。そのうえで業務を依頼する場合には、その後の資料の作成や税務署との応対は全て税理士に任せることができます。税理士報酬は取引内容や金額、個々の事情によって変わってくるので一概には言えませんが、税務署と違って最大限依頼人の利益になるように取り図ってもらえます。また、法人または個人でも顧問税理士がいる場合には、「お尋ね」は確定申告書を作成した税理士に送られることが多いので、「お尋ね」の書類作成をそのまま税理士に委任することも可能です。

税務署は「お尋ね」で何を知りたがっているのか

「お尋ね」で届く書類の多くには、「支払代金の調達方法」という欄があります。税務署は、購入資金をどのように準備したのかを確認したい時に「お尋ね」書を通知することが多いです。不動産などの大きな買い物をした際、借入れだけでなく自己資金を捻出している場合に届きやすい傾向があります。

過去の所得に比べて手持ち資金が多すぎていないか、不動産を共同購入している場合では、共用持ち分と資金の割合に大きな差がないかなど、資金の流れに合理性があるかどうかを確かめています。

「お尋ね」を回答しなければならないという趣旨の法律は定められておらず、回答しなくても罰則規定はありませんが、無視を続けたり、虚偽の回答をしていると税務調査に発展することがあります。「お尋ね」が届いたら、速やかに回答をするのが無難な対応です。

お尋ねに備えて通帳などの証拠書類を保管しよう

こういった「お尋ね」に備えるため、日頃から証拠書類を保管しておくことをおすすめします。不動産の購入の際に親から資金援助を受けた場合には、借用日や金額、借入期間、利息、返済方法などを記載した「借用書」を作成し、定期的に返済していなければ贈与とみなされることもあります。借用書(私文書)は個人でも比較的簡単に作成できますが、作成方法がわからない場合には行政書士に依頼することも可能です。また、購入資金の出どころを証明するために通帳や住宅ローンの契約書などもきちんと保管しておきましょう。不動産投資の場合には、かかった費用の証拠となる請求書などの資料を月別あるいは会社別にファイリングしておきましょう。「お尋ね」であってもまれに税務署から証拠資料を提出することを求められることもあるので、資料の保管はどのような場合であっても大事です。

相続が発生した場合も、預貯金の通帳や証券会社等の所定の書類(株式名義書換請求書や株主票など)、保険証書といった資料や未払いの税金、光熱費、医療費などの請求書は、きちんと保管しておかなければなりません。相続に関する「お尋ね」は相続が発生してから6~8カ月で送られることが多いので(相続税の申告期限は10カ月)、大抵の場合は早急な対処が必要です。お尋ねが届いた時にあわてないよう、資料はしっかりと整理しておきましょう。「お尋ね」が届いた場合、計算の結果、相続税の申告が必要なければ税務署に回答を提出して終了ですが、たとえ相続税の申告が必要になっても、配偶者が相続する財産が「1億6,000万円まで」または「法定相続分まで」なら相続税は一切課税されない「配偶者の税額軽減」や一定の要件を満たす場合に土地の評価額を最大80%減額する「小規模宅地等の特例」などの特例があります。ただし、このような特例の適用を受けるためには申告期限までに相続税の申告書を提出しなければならないので、この点からも相続が発生した場合にはまず税務のプロである税理士に相談することをおすすめします。